健康診断などで「眼圧が高いですね」と指摘されたとき、多くの人は、血圧が高い時のように、すぐに何らかの自覚症状があるものだと考えがちです。しかし、眼圧が高いことの最も恐ろしい側面は、ほとんどの場合、痛み、充血、目のかすみといった、いかなる自覚症状も伴わないまま、静かに進行する、という点にあります。眼圧とは、眼球の内部にかかっている圧力のことで、眼球がその丸い形を維持するために必要な、一定の張力を示しています。この圧力は、眼球内を循環する「房水(ぼうすい)」という透明な液体の、産生量と排出量のバランスによって決まります。何らかの原因で、この房水の排水口が目詰まりを起こし、流れが悪くなると、眼球内に房水が溜まり、眼圧が上昇するのです。眼圧が高いという状態そのものは、病気ではありません。しかし、それは、将来的に、あなたの視力を、永久に奪ってしまう可能性のある、極めて重大な病気「緑内障」の、最大の危険因子(リスクファクター)なのです。高い圧力は、それ自体が問題なのではなく、その圧力が、眼の奥にある、最もデリケートで、重要な組織である「視神経」を、じわじわと、しかし確実に、蝕んでいくことが、最大の問題なのです。自覚症状がないからといって、「自分は大丈夫」と放置してしまうこと。それが、取り返しのつかない事態を招く、最初の、そして、最も大きな過ちとなります。眼圧が高いという指摘は、あなたの眼が発している、声なき、しかし、極めて重要な「SOSサイン」に他なりません。