選ぶべき眼科のすべて!

2025年11月
  • 眼圧が高いとは?サイレントな危険信号の基本

    医療

    健康診断などで「眼圧が高い」と指摘され、不安に感じている方は少なくありません。しかし、眼圧とは一体何なのでしょうか。眼圧、正しくは「眼内圧(Intraocular Pressure, IOP)」とは、眼球の内部にかかっている圧力のことで、眼球がその丸い形を維持するために必要な、一定の張力を示しています。私たちの眼球の中は空っぽではなく、「房水(ぼうすい)」と呼ばれる、血液の代わりとなって眼の組織に栄養を届けたり、老廃物を運び出したりする、透明な液体で満たされています。この房水は、眼の中の「毛様体(もうようたい)」という場所で常に一定量が作り出され、同時に、「隅角(ぐうかく)」という部分にある「線維柱帯(せんいちゅうたい)」というフィルターのような排水口を通って、眼の外へと排出されていきます。蛇口から水が流れ込み、排水口から水が流れ出ていくシンクをイメージすると分かりやすいでしょう。眼圧は、この「作られる房水の量」と「排出される房水の量」のバランスによって、決まります。何らかの原因で、この排水口が詰まり気味になったり、あるいは房水の生産量が過剰になったりすると、眼球内部の液体の量が増え、眼圧が上昇するのです。日本人の正常な眼圧の範囲は、一般的に10〜21mmHg(ミリメートル水銀柱)とされていますが、これはあくまで目安です。重要なのは、「眼圧が高い」という状態そのものは、病気ではないということです。それは、将来、重大な目の病気を引き起こす可能性のある、極めて重要な「危険因子(リスクファクター)」なのです。特に、眼圧が高い状態が続くと、眼の奥にある、脳へと視覚情報を伝える最も重要な神経である「視神経」が、物理的に圧迫され、ダメージを受けてしまいます。この視神経の障害こそが、失明の原因にもなりうる怖い病気、「緑内障」の正体です。自覚症状が何もないまま、静かに視神経を蝕んでいく。それが、高眼圧の最も恐ろしい側面なのです。