眼圧が上がる原因として、患者さん自身が、特に注意すべき、そして、見過ごされがちなのが、他の病気の治療のために使用している「薬の副作用」です。その中でも、最も代表的で、かつ、危険なのが、「ステロイド薬」です。ステロイドは、アトピー性皮膚炎の塗り薬、喘息の吸入薬、花粉症の点鼻薬、あるいは、関節リウマチなどの膠原病の飲み薬として、非常に広く、そして、効果的に使われている、強力な抗炎症薬です。しかし、このステロイドには、副作用として、眼圧を上昇させる可能性があることが、古くから知られています(これを「ステロイド緑内障」と呼びます)。そのメカニズムは、完全には解明されていませんが、ステロイドが、房水の排水口である線維柱帯の細胞に作用し、細胞外マトリックスという、ネバネバした物質の産生を促すことで、フィルターの網目を、物理的に、目詰まりさせてしまうのではないか、と考えられています。この、ステロイドによる眼圧上昇は、全ての人に起こるわけではなく、遺伝的な素因を持つ、一部の人(ステロイド・レスポンダーと呼ばれる)に、起こりやすいとされています。特に、点眼薬や、眼の周りに塗る軟膏のように、直接、眼に作用するステロイドは、リスクが高くなりますが、飲み薬や、吸入薬、注射、そして、長期間使用する皮膚の塗り薬でも、全身を介して、眼圧を上げる可能性があるため、注意が必要です。眼圧の上昇は、使用開始から、数週間から数ヶ月後に、ゆっくりと現れ、自覚症状は、全くありません。ステロイド治療を、長期間、受けている方は、たとえ、目の症状がなくても、定期的に、眼科を受診し、眼圧のチェックを受けることが、副作用による、不可逆的な視神経障害を防ぐために、極めて重要です。また、市販の風邪薬や、胃腸薬に含まれる、一部の「抗コリン薬」は、瞳孔を開く作用があるため、もともと隅角が狭い人が服用すると、急性緑内障発作を、誘発する危険性があることも、知っておくべきです。