緑内障が、何年もかけて、ゆっくりと、静かに視神経を蝕んでいく「慢性」の病気であるのに対し、全く対照的に、ある日突然、急激な視力低下や、視野の中心が見えなくなる、といった症状で発症するのが、「視神経炎」です。これは、その名の通り、視神経に「炎症」が起こる病気です。視神経炎の典型的な症状は、数時間から、数日の間に、片方の眼が、急激に、見えにくくなることです。視界の中心に、暗い影(中心暗点)が現れたり、全体が、霧がかかったように、かすんで見えたりします。また、色の感覚が、鈍くなり、特に、赤色が、色褪せて見える「色覚異常」も、特徴的な症状です-。そして、多くのケースで、眼を動かすと、眼の奥に、鈍い痛みを感じる「眼球運動時痛」を伴います。なぜ、このような、急激な炎症が、視神経に起こるのでしょうか。その原因は、様々ですが、最も多いのが、原因が特定できない「特発性(とくはつせい)」のものです。風邪などの、ウイルス感染の後に、免疫システムが、誤って、自分自身の視神経を攻撃してしまう、自己免疫的なメカニズムが、関与していると考えられています。また、視神経炎は、脳や脊髄に、炎症が繰り返し起こる、神経難病である「多発性硬化症(MS)」の、最初の症状として、現れることも、決して少なくありません。特に、若い女性で、視神経炎が再発を繰り返す場合は、多発性硬化症や、その類縁疾患である「視神経脊髄炎(NMO)」の可能性を、念頭に置いた、精密な検査(頭部MRIなど)が必要となります。このほか、副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症が、すぐ近くにある視神経に波及したり、梅毒や、猫ひっかき病といった、特殊な感染症が、原因となることもあります。視神経炎の多くは、ステロイド薬の大量投与(ステロイドパルス療法)によって、炎症を強力に抑えることで、視力は、ある程度、回復することが期待できます。しかし、早期に、適切な治療を開始することが、後遺症を最小限に食い止めるための、鍵となります。
視神経炎、突然の見えにくさと痛みの正体