高い眼圧や、それが引き起こす緑内障は、誰にでも起こりうる病気ですが、その一方で、特定の条件を持つ人は、そうでない人に比べて、そのリスクが著しく高まることが分かっています。これらの「危険因子(リスクファクター)」を、自分自身が持っているかどうかを知っておくことは、早期発見のために非常に重要です。まず、最も強力な危険因子が「年齢」です。眼圧の上昇や緑内障の発症率は、40歳を境に、年齢とともに顕著に増加します。40歳以上の日本人の、実に20人に1人が緑内障であるというデータもあり、決して他人事ではありません。次に、年齢と同じくらい重要なのが「家族歴(遺伝)」です。両親や兄弟姉妹といった、血縁の近い家族に緑内障の患者さんがいる場合、その発症リスクは、いない人に比べて数倍にも跳ね上がることが知られています。これは、眼の構造や、眼圧への感受性といった、遺伝的な要因が強く関与しているためです。また、「人種」による差も報告されています。アフリカ系やヒスパニック系の人々は、最も一般的なタイプの緑内障(開放隅角緑内障)のリスクが高いとされています。さらに、「眼の身体的特徴」も、リスクに影響します。特に、強い近視(強度近視)の人は、眼球の構造が、視神経に負担がかかりやすい形になっているため、緑内障のリスクが高いことが分かっています。また、角膜(黒目の表面)の厚みが、平均より薄い人も、注意が必要です。そして、全身の「持病」も、無視できません。糖尿病や高血圧、あるいは、心血管系の疾患を持つ人は、眼の血流が悪化しやすく、視神経が、眼圧によるダメージに対して、より脆弱になる可能性があります。このほか、「過去の眼のケガ」や、ステロイド薬の長期使用なども、二次的に眼圧を上昇させる原因となり得ます。これらの危険因子に一つでも当てはまる方は、たとえ自覚症状がなくても、40歳を過ぎたら、定期的に、眼科専門医による、精密な眼の検診を受けることが、強く推奨されます。