眼圧が上がる原因は、加齢による排水路の機能的な「目詰まり」だけではありません。生まれ持った、あるいは、加齢によって変化した、眼球そのものの「構造的な形」が、房水の流れを、物理的に妨げてしまい、眼圧上昇の、直接的な原因となることがあります。これが、「隅角(ぐうかく)」の広さに関わる問題です。隅角とは、角膜(黒目)と、虹彩(茶目)とが、交わる角度の部分を指し、房水のメインの排水口である「線維柱帯」が、位置する、極めて重要な場所です。この隅角が、十分に広く開いていれば、房水は、スムーズに排水口へとたどり着くことができます。これを「開放隅角」と呼び、加齢による目詰まりが原因の「開放隅角緑内障」は、このタイプです。しかし、中には、生まれつき、この隅角が、狭い人がいます。これを「狭隅角(きょうぐうかく)」と呼び、特に、遠視の眼を持つ人や、小柄なアジア人女性に、多い傾向があります。隅角が狭いだけでは、すぐに問題になるわけではありませんが、この状態は、ある日突然、眼圧が、危険なレベルまで急上昇する「急性緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)」の、非常に高いリスクをはらんでいます。その引き金となるのが、「散瞳(さんどう)」、つまり、瞳孔が、開くことです。暗い場所に行ったり、精神的に興奮したり、あるいは、風邪薬などに含まれる、一部の薬の副作用で、瞳孔が開くと、その根元にある虹彩が、外側に向かって、分厚く、たるんだ状態になります。隅角が狭い人の場合、この、たるんだ虹彩の根元が、まるで、排水口の上に、カーテンが覆いかぶさるように、隅角を、物理的に、完全に塞いでしまうことがあるのです。これにより、房水の出口が、完全にブロックされ、眼圧は、50mmHgや、60mmHgといった、異常なレベルまで急上昇し、激しい目の痛み、頭痛、吐き気、そして、急激な視力低下を引き起こします。これは、一刻を争う、眼科の救急疾患であり、治療が遅れれば、失明に至る、極めて危険な状態です。
眼の形も原因に?狭隅角と閉塞隅角緑内障のリスク