なぜ眼圧を下げる必要があるのか?失明に至る静かなる脅威
健康診断などで「眼圧が高いですね」と指摘されたとき、私たちは、その言葉の本当の重みを、どれだけ理解しているでしょうか。眼圧とは、眼球の内部にかかっている圧力のことで、高血圧のように、それ自体が、すぐに痛みや不調を引き起こすわけではありません。しかし、この「症状なき圧力」こそが、私たちの視野を静かに、そして irreversibly(元に戻らない形で)蝕んでいく、恐ろしい病気「緑内障」の、最大の危険因子なのです。緑内障は、日本における失明原因の第一位を占める、極めて深刻な眼疾患です。その本質は、高い眼圧によって、眼の奥にある、脳へと視覚情報を伝える、数百万本の繊細な神経線維の束「視神経」が、物理的に圧迫され、少しずつ、しかし確実に、死滅していくことにあります。一度死んでしまった視神経は、現在の医学では、二度と再生させることはできません。そして、視神経が死滅すると、その神経が担当していた部分の「視野」、つまり見える範囲が、永久に失われてしまうのです。この視野欠損は、多くの場合、自分では気づきにくい、視界の周辺部から、まるで黒いカーテンが静かに降りてくるように、ゆっくりと始まります。病気が進行し、中心部が見えにくくなった時には、すでに多くの視神経が、失われてしまっているのです。したがって、緑内障の治療における、唯一にして、最も重要な目標は、この視神経へのダメージを食い止め、病気の進行を遅らせることにあります。そして、そのために、科学的に有効性が証明されている、唯一の確実な方法、それが「眼圧を下げること(眼圧下降療法)」なのです。眼圧を下げることは、単なる数値の改善ではありません。それは、あなたの視野と、未来の視覚を守るための、最も重要で、力強い「戦い」の始まりなのです。