視野検査、特に静的視野検査は、その精度の高さと引き換えに、患者さんには、高い集中力と、ある程度の時間(片目あたり10分前後)を要求する、負担の大きい検査でした。この課題を克服するため、近年の眼科医療機器の進歩は、より早く、より快適で、かつ、より精度の高い視野検査技術の開発へと向かっています。その代表格が、ハンフリー視野計に搭載された、新しい測定プログラム「SITA(Swedish Interactive Thresholding Algorithm)」です。従来の測定方法では、全ての測定ポイントで、一から感度の閾値を、丹念に探していくため、時間がかかりました。SITAは、患者さんの応答パターンを、リアルタイムで解析し、統計的なデータベースと照合しながら、次に提示する光の明るさを、インテリジェントに予測します。これにより、無駄な測定を大幅に削減し、検査時間を、従来の約半分にまで、短縮することに成功しました。さらに、患者さんの集中力の低下や、まばたきなども、アルゴリズムに組み込まれており、測定の信頼性も、向上しています。また、より新しい技術として、「FDT(Frequency Doubling Technology)視野計」も、スクリーニングの場で、注目を集めています。これは、縞模様のパターンを、高速で点滅させることで、視神経の中でも、特に、緑内障の早期に障害されやすいとされる、特定の種類の神経細胞(M細胞)だけを、選択的に刺激し、その反応を見るという、ユニークな原理に基づいています。検査時間が、片目あたり1分程度と、非常に短く、患者さんの負担が少ないため、健康診断や、人間ドックなどでの、緑内障の早期発見に、その威力を発揮しています。さらに、研究レベルでは、VR(バーチャルリアリティ)ゴーグルを用いた、より没入感の高い、快適な視野検査システムの開発や、AI(人工知能)を用いて、検査結果のパターンから、将来の視野悪化を、高精度で予測する技術の開発なども進められています。これらの技術革新は、視野検査の負担を軽減し、緑内障という、静かなる脅威から、より多くの人々を救うための、大きな希望となっています。