視野検査には、大きく分けて、「動的視野検査」と「静的視野検査」の二つの種類があります。それぞれに特徴があり、目的や病状に応じて使い分けられます。その中でも、古くから行われている、古典的で、かつ全体像を把握するのに優れた方法が、「動的視野検査」です。この検査で、世界的な標準器として用いられているのが、「ゴールドマン視野計」です。検査は、訓練を受けた専門の検査員(視能訓練士など)と、患者さんが、一対一で、対面して行われます。患者さんは、半球状のドームの内側に顔を固定し、中心にある固視灯(目印)を、片目だけで、じっと見つめ続けます。検査員は、ドームの外側から、様々な大きさと明るさの光(視標)を、周辺部から中心部に向かって、ゆっくりと動かしていきます。そして、患者さんは、その光が見えた瞬間に、手元のブザーを鳴らして、検査員に知らせます。この操作を、様々な方向から、繰り返し行うことで、「見える範囲の境界線(等感度線)」を、地図のように描き出していくのです。例えるなら、暗い森の中から、遠くで灯されたランプが、どのくらいの距離まで近づいてきたら見えるようになるかを、360度、全方位にわたって調べていくようなイメージです。この検査のメリットは、視野全体の広がりや、大まかな欠損の形状を、直感的に、そして比較的短時間で把握できることです。特に、脳梗塞や脳腫瘍などによって引き起こされる、視野の半分が欠ける「半盲」のような、大きな視野異常を発見するのに、非常に優れています。一方で、ごく初期の、小さな、あるいは、感度がわずかに低下しただけの暗点を見つけ出す感度は、後述する静的視野検査に比べて、やや劣るとされています。動的視野検査は、視野という広大な領域の「地形図」を描き出す、基本的ながらも、非常に重要な検査なのです。
動く光を捉える、「動的視野検査(ゴールドマン視野計)」