視野狭窄の原因となる、もう一つの代表的な病気が、「網膜色素変性症」です。これは、緑内障のように、眼圧が原因ではなく、遺伝子の異常によって、眼の奥の、光を感じるフィルムである「網膜」の「視細胞(しさいぼう)」が、長い年月をかけて、ゆっくりと、しかし、着実に、その機能を失っていく、進行性の、遺伝性疾患です。現在、根本的な治療法は、まだ確立されておらず、国の指定難病となっています。この病気による視野狭窄には、緑内障とは異なる、いくつかの特徴的なパターンがあります。まず、最も典型的な初期症状が、「夜盲(やもう)」、いわゆる「鳥目」です。暗い場所で、物が見えにくくなったり、明るい場所から、急に映画館のような暗い場所に入った時に、目が慣れるのに、非常に長い時間が、かかったりします。これは、主に、暗い場所での視力(暗所視)を担っている「桿体細胞(かんたいさいぼう)」という種類の視細胞が、最初に、障害されるためです。そして、病気が進行するにつれて、特徴的な視野狭窄が、現れ始めます。多くの場合、視野の中心部と、最周辺部は、比較的、保たれたまま、その中間部分が、ドーナツ状、あるいは、輪の形に、見えなくなる「輪状暗点(りんじょうあんてん)」として、始まります。この輪状暗点が、徐々に、外側と、内側の両方向へと、広がっていき、最終的には、周辺部の視野が、完全に失われ、中心部の、ごくわずかな視野だけが、かろうじて残る、極端な「求心性視野狭窄(きゅうしんせいしやきょうさく)」、いわゆる「トンネルビジョン」の状態へと、至ります。この視野狭窄の進行は、何十年という、非常に長い年月をかけて、ゆっくりと進行するため、患者さん自身は、その変化に、なかなか気づきにくいこともあります。しかし、足元の障害物に、気づかずに、つまずいたり、横から出てきた人や、車に、ぶつかりそうになったりと、日常生活に、徐々に、支障をきたすようになります。この病気は、原因となる遺伝子が、多数、発見されており、そのタイプによって、進行のスピードや、症状の現れ方も、様々です。現時点では、進行を、完全に止める治療法はありませんが、ビタミンAの、大量療法や、遮光眼鏡の使用など、進行を、わずかでも、遅らせるための、対症療法が行われます。