現在、日本で行われている白内障手術で、最も広く、標準的に使用されているのが、「単焦点(たんしょうてん)眼内レンズ」です。これは、その名の通り、ピントが合う距離が、「ただ一つの焦点」に、固定されている、最もシンプルな構造のレンズです。この単焦点レンズは、健康保険が適用されるため、患者さんの経済的な負担が少なく、また、そのシンプルな光学設計ゆえに、見え方の「質」が、非常に高いという、大きなメリットがあります。手術の前に、医師と患者が相談し、その一つの焦点を、どこに合わせるかを、あらかじめ決定します。選択肢は、主に三つ。「遠方」、「近方」、あるいは、その中間の「中間距離」です。例えば、「遠方」にピントを合わせた場合、手術後は、遠くの景色や、テレビの画面、そして、車の運転などは、眼鏡なしで、非常によく見えるようになります。しかし、その代償として、手元の、スマートフォンや、本の文字、あるいは、食事の際の、お皿の上などは、ぼやけてしまうため、日常生活では、「老眼鏡(近用眼鏡)」が、不可欠となります。逆に、「近方」にピントを合わせた場合は、手元の作業は、裸眼で快適に行えますが、遠くを見るためには、近視用の眼鏡が必要となります。単焦点レンズの、最大の長所は、その「見え方の鮮明さ(コントラスト感度)」です。光を、一つの焦点に、100%集中させるため、非常に、くっきり、はっきりとした、質の高い視界が得られます。また、後述する多焦点レンズに比べて、夜間に、光の周りに輪がかかって見えたり(ハロー)、光がギラついて見えたり(グレア)といった、特有の見え方の問題が、ほとんどないことも、大きな利点です。特に、夜間の運転を頻繁に行う方や、写真や絵画など、色の鮮やかさや、微妙な濃淡を、重視する趣味を持つ方、そして、とにかく、最もクリアな見え方を、最優先したい、と考える方にとっては、単焦点レンズは、非常に優れた、満足度の高い選択肢となるでしょう。
最もスタンダードな選択肢、「単焦点眼内レンズ」の仕組みと特徴