白内障は、主に、加齢による、眼そのものの老化現象ですが、その発症や、進行のスピードは、「全身の健康状態」と、密接に、深く、関わっています。特に、水晶体の透明性を、著しく脅かす、最大の、全身性のリスク因子、それが「糖尿病」です。糖尿病の患者さんは、そうでない人に比べて、白内障を、より若い年齢で発症し、その進行も、速いことが、古くから知られています。これは、高血糖の状態が、水晶体に、直接的なダメージを与えるからです。そのメカニズムは、こうです。血液中のブドウ糖(血糖)濃度が、高い状態が続くと、水晶体の中では、「ポリオール代謝経路」という、特殊な代謝経路が、活発になります。この経路で、ブドウ糖は、「ソルビトール」という、糖アルコールの一種に、変換されます。問題は、このソルビトールが、水晶体の細胞膜を、通過しにくく、細胞の外に、排出されにくい、という性質を持っていることです。そのため、高血糖が続くと、水晶体の細胞内に、ソルビトールが、どんどん、蓄積していきます。すると、細胞内外の「浸透圧」のバランスが崩れ、細胞の外から、細胞の中へ、水分が、引き込まれていきます。これにより、水晶体の線維は、水分を含んで、膨張し、その、規則正しい配列が、乱れてしまいます。この、構造的な乱れが、光の透過性を、著しく低下させ、水晶体の「濁り」、すなわち、白内障を、引き起こすのです。これが、「糖尿病白内障」の、典型的なメカニズムです。したがって、糖尿病と診断された方が、白内障の進行を、予防するためには、眼科での、定期的なチェックと同時に、内科での、「厳格な血糖コントロール」が、何よりも、不可欠となります。ヘモグロビンA1cの値を、目標範囲内に、安定して保つことが、水晶体を、高血糖のダメージから守り、クリアな視界を、長く維持するための、最も重要な鍵となるのです。全身の健康管理は、巡り巡って、目の健康を、守ることに、直結しているのです。
全身の健康は眼の健康、「糖尿病」の厳格なコントロール