「ブルーベリーは、目に良い」「ニンジンを食べれば、視力が良くなる」。私たちは、昔から、特定の食べ物が、目の健康に良いという話を、よく耳にします。これらの「目に良い食べ物」は、果たして本当に、視力を良くする効果があるのでしょうか。その科学的根拠と、限界について、正しく理解しておくことが重要です。まず、ブルーベリーや、カシスに含まれる、紫色の色素成分「アントシアニン」です。アントシアニンには、強い抗酸化作用があり、眼の網膜にある、光を感じるタンパク質「ロドプシン」の再合成を助ける働きがあるとされています。これにより、眼の疲労感を和らげたり、暗い場所での見え方(暗順応)を、一時的に改善したりする効果は、研究で示唆されています。しかし、アントシアニンを摂取したからといって、近視の度数が改善したり、視力検査の数値が、恒久的に向上したりすることはありません。あくまで、眼の「疲れ」に対する効果です。次に、ニンジンなどに代表される、緑黄色野菜に豊富に含まれる「ビタミンA(β-カロテン)」です。ビタミンAは、網膜の機能を正常に保ち、夜間の視力を維持するために、不可欠な栄養素です。ビタミンAが極端に欠乏すると、「夜盲症(鳥目)」という、暗い場所で見えにくくなる病気を引き起こします。しかし、これも、通常の食生活を送っている現代の日本人において、ビタミンA不足が、視力低下の直接的な原因となることは、極めて稀です。したがって、ニンジンをたくさん食べたからといって、近視が治るわけではないのです。このほか、ほうれん草やケールに含まれる「ルテイン」や「ゼアキサンチン」は、網膜の中心部である黄斑を、紫外線やブルーライトのダメージから守る、天然のサングラスのような役割を果たし、加齢黄斑変性という、失明に繋がる病気のリスクを、低減する効果が期待されています。これらの栄養素は、確かに、目の「健康を維持する」上で、非常に重要です。しかし、それらが、一度低下してしまった「視力(屈折度数)そのものを、良くする(治す)」という、魔法のような効果を持つわけではない、という、その限界を、冷静に認識しておくことが、大切なのです。
視力を良くする食べ物、その科学的根拠と限界