「物が二重に見える」という症状(複視)は、非常に不安になる、目の異常の一つです。この複視には、大きく分けて、二つの種類があります。一つは、片方の眼を隠すと、二重に見えるのが治まる「両眼複視」。これは、左右の眼の視線が、ずれてしまっていること(斜視など)が原因で、脳梗塞などの、脳の病気のサインである可能性もあり、注意が必要です。しかし、もう一つ、白内障の初期症状として、特徴的に現れるのが、「片方の眼を隠しても、物が二重、あるいは、三重に、ぶれて見える」という、「単眼複視(たんがんふくし)」です。例えば、月を見た時に、一つの月が、いくつかに重なって、ぶれて見える、といった症状です。この、片方の眼だけで起こる複視は、なぜ、生じるのでしょうか。その原因は、水晶体の中で、濁りが、不規則な形で、発生することにあります。健康で透明な水晶体は、均一なレンズとして機能し、光を、網膜上の一点に、きれいに集光させます。しかし、白内障が始まると、水晶体の中に、水の通り道(水隙)ができたり、一部だけが、濁ったり、硬くなったりと、屈折率が、不均一な状態になります。つまり、一枚のレンズの中に、性質の異なる、複数のレンズが、混在しているような状態になるのです。そのため、一つの物体から来た光が、この不均一な水晶体を通過する際に、複数の方向に、不規則に屈折してしまい、網膜上に、像が、一つではなく、二つも、三つも、結ばれてしまうのです。これが、単眼複視の正体です。この症状は、特に、水晶体の周辺部(皮質)から、スポーク状(自転車の車輪のよう)に、濁りが始まる「皮質白内障」の初期に、現れやすいとされています。乱視が、急に進んだように感じることもあります。もし、あなたが、片目だけで見ても、物がぶれて、二重に見える、という症状に気づいたら、それは、あなたの眼のレンズが、不均一な状態になっていることを示す、白内障の、重要なサインかもしれません。
片目だけで見ても物が二重に見える「単眼複視」