高い眼圧が、長期間にわたって続くと、私たちの眼の中では、一体、何が起こるのでしょうか。その最も深刻で、かつ、不可逆的な(元に戻らない)結末、それが「視神経の障害」です。視神経とは、眼の奥の網膜で捉えられた、光の情報を、電気信号に変えて、脳へと送り届ける、約120万本もの、非常に細い神経線維が束になった、情報ハイウェイです。この視神経ケーブルが、眼球壁を貫通して、脳へと向かう、出口の部分を「視神経乳頭」と呼びます。眼球の構造上、この視神経乳頭は、圧力に対して、最も弱い、ウィークポイントとなっています。高い眼圧は、このウィークポイントに対して、まるで、指で、柔らかい豆腐を、じわじわと押し潰すように、持続的な圧迫力を加え続けます。この物理的な圧迫によって、繊細な神経線維は、一本、また一本と、ダメージを受け、死滅(アポトーシス)していきます。さらに、この圧迫は、視神経に栄養を供給している、周囲の毛細血管の血流をも、悪化させます。栄養と酸素が、十分に届かなくなった神経線維は、さらに、その機能を失い、死滅のプロセスが加速します。問題は、一度死んでしまった視神経は、現在の医学では、二度と、再生させることはできない、という、厳然たる事実にあります。それは、まるで、コンピュータとモニターを繋ぐケーブルが、内部で、一本ずつ、断線していくようなものです。最初は、数本の断線では、画面の映りに、大きな変化は感じられないかもしれません。しかし、その断線が、何万本、何十万本と、積み重なっていった時、画面には、もはや、何も映らなくなってしまうのです。高い眼圧がもたらす、最大の悲劇は、この、静かで、しかし、着実な、視神経の死滅にあるのです。