「眼圧が高い」と診断されたとき、緑内障の治療や進行予防のために、ほぼ全ての患者さんが、まず最初に処方されるのが、「眼圧を下げるための点眼薬(目薬)」です。毎日、欠かさずに行う、このわずか一滴の点眼こそが、失明に至る可能性のある、緑内障という、静かなる病から、あなたの視野を守るための、最も基本的で、かつ、最も重要な「生命線」となります。では、なぜ、目薬を差すだけで、眼球の内部の圧力である「眼圧」を、下げることができるのでしょうか。その仕組みを理解するためには、まず、眼圧が、どのようにして決まるのかを知る必要があります。私たちの眼球の中は、「房水(ぼうすい)」と呼ばれる、透明な液体で満たされています。この房水は、眼の中の「毛様体(もうようたい)」という場所で、常に、一定のペースで「産生(蛇口から水が出る)」され、同時に、「隅角(ぐうかく)」という部分にある「線維柱帯(せんいちゅうたい)」という、排水口のフィルターのような組織を通って、眼の外へと「排出(排水口から水が抜ける)」されていきます。眼圧は、この「産生」と「排出」の、絶妙なバランスによって、一定に保たれているのです。緑内障の多くは、この排水口のフィルターが、目詰まりを起こし、房水の排出が、スムーズにいかなくなることで、眼圧が上昇します。眼圧下降点眼薬の役割は、このバランスを、薬の力で、正常な状態に戻してあげることにあります。そのアプローチは、大きく分けて二つ。一つは、「房水の産生を、抑制する」こと。つまり、蛇口を少し締めて、眼の中に入ってくる水の量を、減らすのです。もう一つは、「房水の排出を、促進する」こと。排水口の流れを良くして、眼の外へ出ていく水の量を、増やすのです。現在、処方されている、様々な種類の点眼薬は、すべて、この二つのメカニズムの、いずれか、あるいは、両方に作用することで、効果的に、眼圧を下げているのです。