「白内障の手術」と聞くと、多くの人が、メスで、眼を大きく切開する、怖い手術を、イメージするかもしれません。しかし、現代の白内障手術は、技術の進歩により、驚くほど、患者さんの体に、負担の少ない、低侵襲なものへと、進化しています。現在、世界中で、標準的な術式として行われているのが、「超音波乳化吸引術(ちょうおんぱにゅうかきゅういんじゅつ)」です。この手術は、通常、入院の必要がない「日帰り手術」として、行われます。手術は、点眼薬による局所麻酔で行われるため、意識は、はっきりしていますが、痛みは、ほとんど感じることはありません。手術室に入り、消毒が終わると、まず、執刀医は、顕微鏡を覗きながら、角膜(黒目)の縁を、2〜3mm程度、ごく小さく切開します。次に、水晶体を包んでいる、透明な袋「水晶体嚢(すいしょうたいのう)」の、前の部分(前嚢)を、ピンセットのような器具で、円形に、丸く切り取ります。これは、手術の中でも、最も、繊細な技術を要する、重要なステップです。そして、この小さな切開創から、「超音波ハンドピース」という、先端から、超音波振動を発する、細い器具を、眼の中に挿入します。この超音波の、微細な振動によって、硬く濁った水晶体の核と、皮質を、まるで、ミキサーにかけるように、細かく砕きながら、同時に、吸引して、取り除いていきます。この時、水晶体嚢という、透明な袋だけは、眼の中に、きれいに残しておきます。この袋が、後で、人工の眼内レンズを、入れるための、土台となるのです。水晶体の中身が、完全に取り除かれたら、最後に、インジェクターと呼ばれる、特殊な器具を使って、折りたたまれた、柔らかい素材の「眼内レンズ」を、切開創から、眼の中に挿入します。眼内レンズは、残しておいた水晶体嚢の中で、ゆっくりと、元の形に広がり、正確な位置に、固定されます。切開創は、非常に小さく、自然に、圧着するため、多くの場合、縫合する必要は、ありません。これで、手術は終了です。手術そのものにかかる時間は、症例にもよりますが、わずか10分から20分程度。患者さんは、少し休憩した後、眼帯をして、その日のうちに、帰宅することができます。
手術の実際、10分で終わる「超音波乳化吸引術」の流れ