網膜剥離が、発症してから失明に至るまでの期間は、ケースバイケースで、一概には言えません。その進行スピードを決定する、最も重要な要因、それは、最初に網膜に裂け目(網膜裂孔)ができた「場所」と、剥離の「種類」です。まず、最も頻度が高く、かつ、進行が速いのが、「裂孔原性(れっこうげんせい)網膜剥離」です。これは、主に加齢によって、眼球の内部を満たしているゲル状の硝子体(しょうしたい)が、縮んで、網膜から剥がれる際に、網膜の一部を引っ張り、裂け目(網膜裂孔)を作ってしまうことが原因で起こります。そして、その裂け目から、液化した硝子体が、網膜の下に流れ込むことで、網膜が、まるで壁紙のように、剥がれていきます。このタイプの剥離の進行スピードは、裂け目ができた「場所」に、大きく依存します。もし、裂け目が、網膜の「上側」にできた場合、重力の影響で、剥離の原因となる水(液化硝子体)が、急速に、下方へと流れ込み、数時間から、わずか1〜2日という、極めて短期間のうちに、視力の中枢である「黄斑」を巻き込み、急激な視力低下や、視野の中心が見えなくなる「中心暗点」を引き起こす可能性があります。一方、裂け目が、網膜の「下側」にできた場合は、重力によって、剥離の進行が、ある程度、抑えられるため、数週間から、数ヶ月かけて、ゆっくりと進行することもあります。このほかにも、糖尿病網膜症などが原因で、網膜の表面にできた異常な膜が、網膜を引っ張って剥がす「牽引(けんいん)性網膜剥離」や、ぶどう膜炎などの、強い炎症によって、網膜の下に液体が滲み出す「滲出(しんしゅつ)性網膜剥離」といった種類があります。これらのタイプは、裂孔原性に比べて、進行が比較的、緩やかであることが多いですが、根本原因の治療が不可欠です。いずれにせよ、剥離が、視力の中枢である「黄斑」に及ぶかどうかが、その後の視力予後を決定する、最大の分かれ道となります。
失明へのカウントダウン、剥離の「場所」と「種類」が運命を分ける