白内障の初期症状として、最も多くの人が最初に自覚するのが、視界全体が、なんとなく「かすんで見える」という症状です。この「かすみ」は、近視や乱視のように、ピントが合わずにぼやける感覚とは、少し異なります。まるで、薄いすりガラスを通して物を見ているような、あるいは、霧のかかった朝の景色のような、コントラストが低下した、全体的に白っぽく、ぼんやりとした見え方と表現されます。眼鏡を新しくしても、コンタクトレンズをきれいにしても、この「もや」がかかったような感覚が、スッキリと晴れることはありません。「メガネが汚れているのかな?」と思って、何度もレンズを拭いてしまう、というのも、白内障の患者さんによく見られる、特徴的な行動の一つです。なぜ、このような、独特のかすみが生じるのでしょうか。その原因は、濁り始めた水晶体の「光の乱反射」にあります。健康で透明な水晶体は、入ってきた光を、きれいに屈折させて、網膜上の一点に、シャープな像を結びます。しかし、白内障によって、水晶体の中に、濁りが生じ始めると、その濁りの部分で、光が、様々な方向に、乱雑に散乱してしまいます。この「乱反射」した光が、網膜全体に、まるでベールのように広がってしまうため、本来、鮮明であるべき像の輪郭がぼやけ、全体的に、白くかすんで見えてしまうのです。このかすみは、特に、明るい屋外や、日差しの強い場所で、より強く感じられる傾向があります。これは、瞳孔が、明るい場所で小さくなることで、濁りのある水晶体の中心部を、光が通過する割合が増えるためと考えられています。もし、あなたが、以前と比べて、世の中全体が、少しだけ「白っぽく」見えるようになったと感じたら、それは、あなたの眼のレンズが、SOSサインを発しているのかもしれません。